ゼップバウンドと低血糖:お酒・食事・運転・ほかの薬

ちんあなご編集部|内容の確認日 2026年11月2日

要点
  • 日本肥満学会は、この薬を単独で使う場合、低血糖のリスクは少ないとしています。ただし、インスリン、SU薬、グリニド薬と一緒に使うと、低血糖が起きやすくなります。
  • 電子添文は、低血糖が起きやすい人や状態として、下垂体・副腎の機能の異常、栄養不良や不規則な食事、激しい筋肉運動、そして過度のアルコール摂取(患者向けの資料では「飲酒量が多い人」)を挙げています。
  • 症状は、脱力感、強い空腹感、冷や汗、動悸、手足のふるえ、意識が薄れる、などです。出たら、通常は糖質を含む食品や砂糖をとります。
  • 低血糖を起こすと、高い所での作業や車の運転が事故につながるおそれがあるため、特に注意するよう書かれています。

どのくらい起きるのか

電子添文の「重大な副作用」に、低血糖が載っています。頻度は「不明」とされています。試験の数字を見ると、次のとおりです。

試験血糖値54mg/dL未満の低血糖そのほか
日本人の試験(SURMOUNT-J、糖尿病のない肥満症の人)10mg群 5.5%、15mg群 9.1%、偽薬群 1.3%重い低血糖はありませんでした
国際共同の試験(SURMOUNT-1、全体)1.4〜1.6%、偽薬群 0.2%審査報告書に載っている数字です。うち重症低血糖は5mg群の1例でした(電子添文17.1.2)

日本人の試験の割合は、国際共同の試験より高く出ています。参加した人数は、日本人の試験で各群70人台と少なく、数字の違いが何によるのかは、電子添文からは読み取れません。

日本肥満学会は、この薬を糖尿病のある人・ない人のどちらでも、単独で使う場合には、低血糖のリスクは少ないとしています。そのうえで、ほかの血糖降下薬、特にインスリン製剤、SU薬、グリニド薬と併用する場合は、低血糖を来す可能性が増えるとしています。

低血糖が起きやすい人・状態

電子添文の9.1.3は、「低血糖を起こすおそれがある」患者または状態を、次の4つのまとまりで挙げています。右の列は、患者向医薬品ガイドの言い方です。

電子添文のまとまり患者向医薬品ガイドの言い方
脳下垂体機能不全または副腎機能不全脳下垂体機能に異常のある人、副腎機能に異常のある人
栄養不良状態、飢餓状態、不規則な食事摂取、食事摂取量の不足、衰弱状態栄養状態の悪い人、飢餓状態の人、食事が不規則な人、食事が十分に摂れない人、衰弱している人
激しい筋肉運動激しい筋肉運動をしている人
過度のアルコール摂取飲酒量が多い人

食事を抜く日や、吐き気・食欲低下で食べられない日が続くと、2つ目の「食事摂取量の不足」に近い状態になります。この場合も、量を自分で変えずに医師へ連絡してください。

お酒については、何が書かれているか

電子添文で飲酒にふれているのは、確認した範囲では、上の「過度のアルコール摂取」の1か所です。患者向医薬品ガイドは、「使う前に医師または薬剤師に告げる人」の中に「飲酒量が多い人」を入れています。

書かれていないこともあります。飲んでよい量や、飲んではいけない、という線は、電子添文にも患者向けの資料にも見当たりません。「少しなら大丈夫」とも「全く飲んではいけない」とも、このサイトでは言えません。

ほかにも、日本肥満学会の2026年10月3日の文書が、ケトーシスなどの危険を高めるものとして、過度なアルコールの摂取を挙げています。ケトーシスについては副作用のページで扱っています。

お酒を飲む習慣がある人は、使い始める前に、飲む量と頻度を医師か薬剤師に話して、自分の場合を相談してください。

症状と、出たときの対処

患者向医薬品ガイドの記載です。

項目書かれていること
低血糖の症状脱力感、強い空腹感、冷や汗、動悸(どうき)、手足のふるえ、意識が薄れる、など
出たときの対応通常は、糖質を含む食品や砂糖をとる
アカルボース、ボグリボース、ミグリトールを併用している人砂糖ではなく、ブドウ糖をとる

ガイドは、使うにあたって、患者本人または家族が、注射や低血糖症状への対処法などについて、十分に理解できるまで説明を受けるよう書いています。

意識が薄れる、けいれんがある、といった重いときは、本人は自分で対処できません。周りの人が救急を呼ぶ、という動き方を、家族と事前に話しておくと安心です。

ほかの薬と一緒に使うとき

一緒に使う薬書かれていること
ビグアナイド系、スルホニルウレア剤、インスリン製剤、SGLT2阻害剤などの糖尿病の薬電子添文の併用注意(10.2)に「低血糖の発現に注意すること」とある
スルホニルウレア剤、速効型インスリン分泌促進剤、インスリン製剤患者向医薬品ガイドは、低血糖症状が起こりやすくなるため、医師の判断で、これらの薬の量やインスリンの注射量が減ることがあるとしている。意識消失の可能性もあるので、家族や周りの人にも知らせるよう求めている
インスリンこの薬は血糖値を下げるが、インスリンの代わりにはならない(8.10)。2型糖尿病のある人は、使う前にインスリンによる治療が必要かの確認が行われる。インスリンから切り替えると、急激な高血糖や糖尿病性ケトアシドーシスが出ることがある

糖尿病の薬を飲んでいる人が、自分の判断で薬を減らしたり、やめたりすることは避けてください。必ず処方した医師に相談します。

運転・高い所での作業

電子添文は、低血糖を起こすことがあるので、高所作業、自動車の運転などに従事している患者に投与するときは注意することと書いています(8.12)。患者向医薬品ガイドは、「危険を伴う作業に従事しているときに低血糖をおこすと事故につながるおそれがある」として、特に注意するよう求めています。

上の3つは、電子添文の注意をもとに編集部が整理した例です。具体的な基準は、原文にはありません。

よく出る疑問

お酒を飲んでも、低血糖になりませんか?

電子添文は、過度のアルコール摂取を、低血糖が起きやすい状態の1つに挙げています。どのくらいの量から起きやすいのかは、書かれていません。飲酒の習慣がある人は、医師か薬剤師に量と頻度を伝えて、相談してください。

食欲がなくて、ほとんど食べない日があります。

食事の量が足りない状態は、低血糖が起きやすい状態に入っています。吐き気や嘔吐で水分もとれないときは、次の注射の日を待たずに、早めに医師に連絡してください。

低血糖の症状が出たとき、飴やジュースでもよいですか?

患者向医薬品ガイドは、「糖質を含む食品や砂糖」をとることとしています。α-グルコシダーゼ阻害薬(アカルボース、ボグリボース、ミグリトール)を飲んでいる人は、ブドウ糖です。具体的に何を持ち歩くかは、薬剤師に相談してください。

車の運転は、やめなければいけませんか?

運転を禁止する文は、電子添文にはありません。低血糖を起こすと事故につながるおそれがあるため、運転などに従事している人は特に注意するよう書かれています。使い始める前に、仕事や生活で運転することを医師に伝えてください。

出典(編集部が原文を読んだ資料)
  1. ゼップバウンド皮下注アテオス 電子添文(2026年9月改訂 第6版)|PMDA(2026-11-02確認)
  2. ゼップバウンド皮下注アテオス 患者向医薬品ガイド(2026年5月更新)|PMDA(2026-11-02確認)
  3. 肥満症治療薬の安全・適正使用に関するステートメント(2025年4月10日改訂)|日本肥満学会(2026-10-31確認)
  4. 安全な減量に関するステートメント―インクレチン関連薬を用いた減量によるケトーシス関連事象の注意喚起―(2026年10月3日)|日本肥満学会(2026-10-31確認)
  5. 審査報告書 ゼップバウンド皮下注(2024年12月27日承認)|PMDA(2026-10-01確認)
  6. Kadowaki T, et al. SURMOUNT-J. Lancet Diabetes Endocrinol. 2025;13(5):384-396|PubMed(抄録)

このページは、電子添文や国のガイドラインなど公開された資料をまとめたものです。一人ひとりの体に合うかどうかは判断できません。始める・やめる・量を変えるときは、処方した医師か薬剤師に相談してください。当サイトは医療機関の紹介も、薬の販売もしていません。詳しくは免責事項をご覧ください。