72週の区切りと、やめた後
- 肥満症で使える期間は、国のガイドラインで最大72週間です。
- 始めてから毎月、体重などを確かめます。3〜4か月たっても良くなる傾向がなければ、中止します。
- 十分に体重が減ったときは、72週を待たずにやめることも考えます。
- やめた後を調べた試験(SURMOUNT-4)では、偽薬に切り替えた人たちの体重が、1年で平均14.5%増えました(審査報告書の数字)。
- 日本人で、やめた後の体重を調べた試験は見つかっていません。
なぜ「72週」なのか
ガイドラインは、上限を72週間とした理由を書いています。日本人を対象にした試験で、効果を主に評価した期間が72週間だったからです。
医療機関は、使い始めるときに治療の計画を立てます。72週後までにやめられるよう指導することも、計画に含めるよう求められています。
保険で使う場合は、「72週以内に投与を中止する計画」を立てた日を、診療報酬の明細書に書く決まりです。
睡眠時無呼吸症候群に使う場合の上限は、52週間です(睡眠時無呼吸症候群での使い方)。
途中の確認と、やめる判断の目安
| 時期 | 確かめること・判断すること |
|---|---|
| 使い始めるとき | 治療の計画をつくります。食事療法と運動療法は、使っている間も続けます |
| 始めてから毎月 | 体重・血糖・血圧・脂質(コレステロールなど)を確かめます |
| 3〜4か月たったころ | 良くなる傾向がなければ、中止します |
| 良くなる傾向が見られた後 | 2〜3か月に1回以上、効果を確かめ続けます |
| 十分に体重が減ったとき | 72週を待たずにやめ、食事と運動だけの管理に移ることを考えます |
| 72週 | 使える期間の上限です |
「十分な効果」の目安について、ガイドラインは、臨床試験では5%以上の体重の減少を達成した人の割合が主な評価項目の一つだった、と添えています。
患者向けの資料にも、3〜4か月使って改善の傾向がなければ中止することがあると書かれています。
やめた後の体重:SURMOUNT-4の数字
チルゼパチドをやめた後の体重を調べた代表的な試験が、SURMOUNT-4です。対象は肥満の成人です。
- 最初の36週間:全員がチルゼパチドを使いました(体が受けつける最大の量として10mgか15mg)。この間に、体重は平均20.9%減りました。
- 36週の時点:670人をくじで2つに分けました。一方はそのまま続け、もう一方は偽薬に切り替えました。
- その後の52週間:両方の群の体重の変化を追いました。
| くじで分けた後の群 | 審査報告書の数字(52週の変化率) | 論文の抄録の数字 |
|---|---|---|
| 偽薬に切り替えた群 | +14.5%(273人の平均。標準偏差9.63) | +14.0% |
| そのまま続けた群 | −6.6%(299人の平均。標準偏差8.56) | −5.5% |
2つの数字が少し違うのは、計算のしかたが違うためです。審査報告書は平均値と標準偏差で示し、論文の抄録は別の推定方法で出しています。どちらも同じ試験の結果です。
始める前から通して見ると(0〜88週)、続けた群は−25.3%、切り替えた群は−9.9%でした(論文の抄録)。
切り替えた群も、平均では始める前より軽いままでした。ただし平均の値なので、一人ひとりがどうなるかを示すものではありません。
国の審査を担うPMDAは、やめた後に体重や健康障害に関わる値が悪くなる傾向が示されたとして、やめる時期は慎重に判断する必要があると述べています。
日本人では、まだ調べられていません
日本人を対象に、やめた後の体重の変化を比べた試験は、編集部が調べた範囲では見つかりませんでした。
日本人の試験(SURMOUNT-J)には、途中で偽薬に切り替えて比べる仕組みはありません。
つまり、日本のガイドラインが定める72週の上限と、海外の試験で見えた「やめると戻りやすい」という結果は、両方とも事実として並んでいます。片方だけを見て判断しないことが大切です。
やめるときに学会が挙げている注意
日本肥満学会は、やめることで次のようなことが起こる可能性を挙げています。
- HbA1c(1〜2か月の血糖の平均を表す値)が目立って上がる
- 肝臓の働きが急に悪くなる
- リフィーディング症候群(食べる量が少なかった体に急に栄養が入ったときに起こる体の異常)
そのため学会は、続けるかやめるかを医師の管理のもとで決めるべきだとしています。
ゼップバウンドは効き目が長く続く薬で、やめた後も作用が残る可能性があると電子添文にあります。やめた後もしばらくは、副作用や血糖値の変化に気をつけます。
やめた後も、食事療法と運動療法は続けます。
もう一度使うときの条件
やめた後に肥満症が悪くなった場合も、すぐにもう一度使えるわけではありません。ガイドラインの決まりは次のとおりです。
- 初めて使ったときと同じように、食事療法と運動療法を行います。2か月に1回以上の管理栄養士の栄養指導も含みます。
- これを原則として6か月以上続けても必要な場合に限って、もう一度使います。
- 健康障害が悪くなって6か月を待てない場合は、必要性を十分に検討し、治療の計画をつくってから再開します。
保険で再び使うときは、やめた日、新しい治療の計画をつくった日、栄養指導を受けたすべての日付などを、明細書に書く決まりです。
膵炎と診断されてやめた人は、もう一度使いません。
使える医療機関の条件は処方できる医療機関の条件で扱っています。
よく出る疑問
72週たったら、やめなければいけませんか?
肥満症での使用について、ガイドラインは投与を「最大72週間」としています。保険で使う場合は、72週以内にやめる計画を立てることが前提です。
やめたら、すぐに体重は戻りますか?
SURMOUNT-4では、偽薬に切り替えた群で、その後の52週に体重が平均で増えました。戻り方は人によって違い、平均の数字から自分の結果は分かりません。
自分の判断でやめてもいいですか?
いいえ。患者向けの資料は、自己判断でやめないよう書いています。日本肥満学会も、続けるかやめるかは医師の管理のもとで行うべきだとしています。
やめた後に、もう一度始めることはできますか?
ガイドラインでは、食事療法と運動療法を原則6か月以上行っても必要な場合に限り、もう一度使えます。膵炎と診断された人は対象になりません。
- 最適使用推進ガイドライン チルゼパチド(ゼップバウンド皮下注)~肥満症~ 令和7年3月(令和8年5月改訂)|厚生労働省(2026-10-31確認)
- ゼップバウンド皮下注アテオス 電子添文(2026年9月改訂 第6版)|PMDA(2026-10-31確認)
- ゼップバウンド皮下注アテオス 患者向医薬品ガイド(2026年5月更新)|PMDA(2026-10-01確認)
- 審査報告書 ゼップバウンド皮下注(2024年12月27日承認)|PMDA(2026-10-01確認)
- Aronne LJ, et al. SURMOUNT-4. JAMA. 2024;331(1):38-48|PubMed(抄録)
- Kadowaki T, et al. SURMOUNT-J. Lancet Diabetes Endocrinol. 2025;13(5):384-396|PubMed(抄録)
- 肥満症治療薬の安全・適正使用に関するステートメント(2025年4月10日改訂)|日本肥満学会(2026-10-31確認)
- 保医発0318第3号「肥満症の効能又は効果を有するチルゼパチド製剤に係る最適使用推進ガイドラインの策定に伴う留意事項について」(令和7年3月18日)|東海北陸厚生局掲載(2026-10-01確認)
このページは、電子添文や国のガイドラインなど公開された資料をまとめたものです。一人ひとりの体に合うかどうかは判断できません。始める・やめる・量を変えるときは、処方した医師か薬剤師に相談してください。当サイトは医療機関の紹介も、薬の販売もしていません。詳しくは免責事項をご覧ください。