個人輸入や海外通販、SNSでゼップバウンドを手に入れる危険
「海外から買えば安い」「SNSで譲ってもらえる」という話を見かけたときに、国と公的機関が何を書いているかをまとめました。当サイトは、入手先や輸入の方法を紹介しません。
- 個人輸入した医薬品で健康被害が出ても、医薬品副作用被害救済制度の救済対象となりません(厚生労働省)。
- 個人輸入品は、日本の法律による品質、有効性、安全性の確認を受けていません。偽造品かもしれない、と厚生労働省は書いています。
- SNSやフリマで、個人どうしがGLP-1受容体作動薬などを売り買いするのは違法です。
救済制度が対象にしている薬
医薬品副作用被害救済制度は、薬を正しく使ったのに副作用が起きたときの公的な給付です。対象になるのは、入院が必要なほどの病気、日常生活が大きく制限される障害、死亡です(PMDA)。
PMDAは、対象の医薬品を「製造販売の承認・許可を受けた医薬品」としています。厚生労働省の個人輸入のページは、個人輸入された医薬品による健康被害は救済の対象とならない、とはっきり書いています。
| 手に入れ方と使い方 | 公的な説明 |
|---|---|
| 国内の正規品を、電子添文の効能と用法のとおりに使った | 救済の対象になりうる。正しい使い方だったかは、一件ずつ判断される(PMDA) |
| 国内の正規品を、美容・痩身・ダイエットのために効能の外で使った | 適正な使用と認められず、給付を受けられない可能性が非常に高い(厚生労働省) |
| 海外から個人輸入した薬を使った | 個人輸入された医薬品による健康被害は救済の対象とならない(厚生労働省) |
個人輸入品について、国が挙げている危険
厚生労働省の「医薬品等を海外から購入しようとされる方へ」は、個人輸入品の危険を次のように挙げています。
- 日本の法律に基づく品質、有効性、安全性の確認がされていない
- 期待した効果が出なかったり、体に有害な物質が入っていたりすることがある
- 不衛生な場所や方法で作られたもの、正規のメーカー品を装った偽造品かもしれない
- 説明が外国語で書かれていて、正しく読み取るのが難しい
- 医師や薬剤師でも成分や作用の情報が足りず、副作用にすぐ対応しにくいことがある
そのうえで、医薬品の個人輸入は、通常、利点より危険のほうが大きい場合が多いとしています。
個人輸入には決まりもあります。輸入した本人が使う分に限られ、ほかの人に売ったり譲ったりはできません。ゼップバウンドは劇薬で、処方箋医薬品です。劇薬と処方箋薬を税関の確認だけで輸入できるのは、用法・用量から見て1か月分以内です。この枠は手続きの範囲を決めたもので、安全を約束するものではありません。
偽造品と、日本で承認されている形
日本で承認されているゼップバウンドは、使い切りの注入器「アテオス」の6つの量(2.5mgから15mg)です。箱とラベルには、すべての量で薄い緑色が使われています。
英国の規制当局MHRAは2026年2月24日、同じ成分のマンジャロの偽造品が出回ったと公表しました。海外向けの形(KwikPen)の15mgで、英国のオンライン薬局1か所を通じたものです。確認されたのは5本で、注入器の不具合から見つかりました。KwikPenは、日本のアテオスとは別の形です。
厚生労働省も、個人どうしで手に入れた薬には、偽造品、品質が落ちたもの、成分や量がわからないものが含まれる可能性があるとしています。
SNSやフリマでの個人間の売り買い
厚生労働省は、GLP-1受容体作動薬などをインターネットなどで個人どうしで売り買いするのは違法だとしています。薬機法は、許可のない人が商売として医薬品を売ったり渡したりすることを認めていません(第24条)。日本イーライリリーも、許可なく個人で売買したり転売したりするのは薬機法に違反すると説明しています。
ゼップバウンドの保管の決まりは、凍らせずに2〜8℃で光を避けることです。室温に置くなら30℃以下で、外箱に入れたまま、21日以内に使います。人から買った薬が、どこでどう置かれていたかは確かめられません。
痩身目的の処方とオンライン処方への注意(日付順)
| 日付と出したところ | 内容 |
|---|---|
| 2023年10月25日・日本医師会の記者会見 | 一部の医薬品が、個人輸入や美容クリニックで「痩せ薬」として不適切に使われていると指摘した |
| 2023年11月28日改訂・日本糖尿病学会の見解 | 美容・痩身・ダイエット目的の自由診療の広告が見られるとして、会員に不適切な広告を厳しく戒めるよう求めた |
| 2023年12月・厚生労働省とPMDAの安全性情報No.406 | 適応外の使い方の安全性と有効性は確かめられていない。痩身目的で使って重い健康被害が出ても、救済の給付を受けられない可能性が非常に高い |
| 2023年12月20日・国民生活センター | ダイエットを目的に何か月分もの糖尿病の薬が出される、定期購入の相談が目立つと公表した |
| 2024年11月14日・PMDAのゼップバウンド審査報告書 | 痩身などを目的にした不適正な使い方を防ぐ方法は、医療の現場を見ながら検討を続ける必要があるとした |
| 2025年3月18日・厚生労働省の肥満症ガイドライン | 対象となる肥満症のほかに、痩身やダイエットなどを目的に投与してはならないとした |
| 2025年3月19日・日本イーライリリーと田辺三菱製薬の発表 | 承認された適応症のほかの目的での安全性と有効性は確認されておらず、思わぬ健康被害が出るおそれがあるとした |
| 2025年4月10日改訂・日本肥満学会のステートメント | 健康障害のない肥満や、低体重・普通体重の人に、美容・痩身・ダイエットの目的で使う薬ではないとした |
| 2026年4月2日・オンライン診療の指針の改訂 | 医学的な必要がないのに体重を減らす目的で糖尿病の薬などを望まれたとき、処方は「あってはならず」とした。持病がわからない初診の人に8日分以上を出さないとも決めている |
| 2026年5月18日・ガイドラインの改訂と睡眠時無呼吸症候群のガイドライン | 心理的なケアやサポートの必要を書き加えた。睡眠時無呼吸症候群でも、痩身やダイエットなどを目的に投与してはならないとした |
| 2026年6月16日・厚生労働省の通知 | 美容・痩身の目的で使われている実態を確認したとした。対象には肥満症の薬として承認されたGLP-1受容体作動薬等も含む。承認外の自由診療の広告は原則としてできない |
| 2026年6月16日以降・厚生労働省の一般向けページ | 安易に使わないよう呼びかけた。SNSなどで個人どうしが売り買いするのは違法だとした |
| 2026年6月23日・国民生活センター | 痩身などを目的にしたオンライン診療で、処方薬の定期購入のトラブルが目立つと公表した |
| 2026年10月3日・日本肥満学会のステートメント | 減量目的の使用で、ケトーシスやケトアシドーシスの報告が増えているとして、過度な食事制限と薬を重ねないよう呼びかけた。適応外の薬を使った減量をすすめるものではない、と明記している |
| 2026年10月14日・厚生労働省の再周知の通知 | 2026年6月16日の通知を、上の学会のステートメントとあわせて医療機関などに改めて知らせるよう求めた。薬との因果関係は不明としながら、美容や痩身の目的で使われた場合のケトーシス関連事象の副作用報告を受けている、と書いている |
国民生活センターが公表した相談
2023年12月20日の公表では、美容医療のオンライン診療の相談が増えていました。2021年度は49件、2022年度は205件で、2023年度は10月末の時点で169件でした(前の年の同じ時期は98件)。
相談には、次のような特徴がありました。
- 薬や副作用の説明、持病の問診が足りず、初めての診察で何か月分も処方される
- 定期購入に似た仕組みなのに、特定商取引法による取り消しや解約が難しい場合がある
- 運営する事業者と医師の、どちらが責任を持つのかがわかりにくい
2026年6月23日の公表には、20歳代の女性の相談が載っています。痩身のためにGLP-1受容体作動薬の処方を受けたら、知らないうちに定期購入になっていて、注射薬4本(約2万円)がまた届きました。体に合わず3本が使わないまま残っていましたが、医薬品なのでキャンセルはできないと言われたという内容です。
国民生活センターは、糖尿病の薬や肥満症の薬を痩身の目的で使うことについて、安全性と有効性は確認されていないとしています。1年分のような長い期間の処方がある、とも書いています。
体調が悪いとき、困ったとき
- 体調の変化:すぐに医療機関を受診し、使った薬の名前と、どこから手に入れたかを伝えてください。嘔吐をともなう激しい腹痛が続くのは、急性膵炎の始まりの症状として電子添文に挙がっています。吐き気や嘔吐が続き、食事も水分もとれないときは、ケトーシスの可能性もあるとして、日本肥満学会が注意を呼びかけています(副作用と受診の目安)。
- お金や契約のこと:国民生活センターは、消費者ホットライン188への相談を案内しています。
- 個人輸入を考えているとき:厚生労働省は、自分ひとりで決めず、家族と話し合い、地域の医師や薬剤師に相談するよう勧めています。
よく出る疑問
海外の正規のメーカー品なら、救済制度の対象になりますか?
なりません。厚生労働省は、個人輸入された医薬品による健康被害は救済の対象とならないとしています。海外の規制当局が確かめた薬を説明どおりに使っても、副作用が起きることはある、とも書いています。
個人輸入した薬を、家族や友人に譲ってもいいですか?
いいえ。個人輸入は、輸入した本人が使う分に限られています。ほかの人に売ることも、譲ることもできません。
フリマに未開封のゼップバウンドが出ていました。買っても大丈夫ですか?
買わないでください。個人どうしの医薬品の売り買いは違法だと厚生労働省はしています。偽造品や品質が落ちたものの可能性があり、保管の決まりが守られていたかも確かめられません。
国内の医療機関で、痩身目的の処方を受けた場合はどうですか?
厚生労働省は、美容・痩身・ダイエットの目的で適応外に使った場合、重い健康被害が出ても救済の給付を受けられない可能性が非常に高いとしています。
- 医薬品等を海外から購入しようとされる方へ|厚生労働省(2026-10-01確認)
- 医薬品等の個人輸入について|厚生労働省(2026-09-29確認)
- 医薬品副作用被害救済制度の給付対象|PMDA(2026-10-01確認)
- 医薬品副作用被害救済制度に関するQ&A Q2「適正な使用」とは|PMDA(2026-10-01確認)
- 医薬品副作用被害救済制度に関するQ&A Q7 救済の対象とならない場合|PMDA(2026-10-01確認)
- マンジャロ・リベルサスなどの2型糖尿病治療薬の美容・痩身目的での使用による健康被害にご注意ください|厚生労働省(2026年6月公開・2026-10-31確認)
- GLP-1受容体作動薬及びGIP/GLP-1受容体作動薬の適正使用について(通知)|PMDA(2026年6月16日)
- 「GLP-1受容体作動薬及びGIP/GLP-1受容体作動薬の適正使用について」の再周知について|厚生労働省(2026年10月14日・2026-10-31確認)
- 安全な減量に関するステートメント―インクレチン関連薬を用いた減量によるケトーシス関連事象の注意喚起―|日本肥満学会(2026年10月3日・2026-10-31確認)
- 医薬品・医療機器等安全性情報 No.406|厚生労働省(2023年12月)
- GLP-1受容体作動薬およびGIP/GLP-1受容体作動薬の適応外使用に関する日本糖尿病学会の見解|日本糖尿病学会(2023年11月28日改訂)
- 定例記者会見資料(宮川常任理事)|日本医師会(2023年10月25日)
- 肥満症治療薬の安全・適正使用に関するステートメント|日本肥満学会(2025年4月10日改訂・2026-10-31確認)
- ゼップバウンド皮下注 審査報告書(2024年12月27日承認)|PMDA(2024年11月14日)
- 最適使用推進ガイドライン チルゼパチド(ゼップバウンド皮下注)~肥満症~(令和7年3月・令和8年5月改訂)|厚生労働省(2026年5月)
- 最適使用推進ガイドライン チルゼパチド(ゼップバウンド皮下注)~閉塞性睡眠時無呼吸症候群~(令和8年5月)|厚生労働省(2026年5月)
- ゼップバウンド 薬価基準収載・発売のお知らせ(日本イーライリリー・田辺三菱製薬)(2025年3月19日)
- オンライン診療の適切な実施に関する指針(令和8年4月改訂・医政発0402第6号の別添)(2026年4月2日)
- 痩身目的等のオンライン診療トラブル|国民生活センター(2023年12月20日)
- ニキビ、AGA治療や痩身目的等のオンライン診療のトラブルにご注意|国民生活センター(2026年6月23日)
- 当社製品の適正使用に関する取り組み|日本イーライリリー(2026-09-29確認)
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(第24条)|e-Gov法令検索(2026-09-29確認)
- Falsified Mounjaro KwikPen 15mg pre-filled pens(Drug Safety Update)|MHRA(2026年2月24日)
- ゼップバウンド皮下注 電子添文(2026年9月改訂 第6版)|PMDA(2026-10-31確認)
- ゼップバウンド皮下注アテオスに関する適正使用のお願い(RMP資材)|PMDA(2026年5月)
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