肥満症と診断される基準と、「肥満」との違い
体重が多い状態を「肥満」と呼びます。肥満症は、それとは別の言葉です。肥満のせいで体に病気が出ているか、出やすい状態で、医学的に体重を減らす治療が要るものを指します。ゼップバウンドの対象は、この肥満症の人です。
- 肥満は、BMIが25以上という体の状態の判定です。それだけでは病気とは扱いません。
- 肥満症は、BMIが25以上で、さらに条件が1つ加わったときの診断名です。
- 加わる条件は「肥満に関係する健康障害がある」か「おなかのCT検査で、内臓脂肪の面積が100cm²以上ある」のどちらかです。
- 二次性肥満が疑われるときは、その原因の病気の治療が先になります(下で説明)。
「判定」と「診断」を分けて考える
日本肥満学会の肥満症診療ガイドラインは、2つの作業をはっきり分けています。
- 体重が多いかどうかを判定すること(肥満かどうか)
- 減量の治療が要る病気かどうかを診断すること(肥満症かどうか)
学会のステートメントは、肥満は病気ではないと書いています。そのため、肥満があるだけではゼップバウンドの対象になりません。
厚生労働省のガイドラインによると、2022年の国民健康・栄養調査では、成人の男性の31.7%、女性の21.0%が肥満(BMI25以上)でした。肥満の人がみな肥満症というわけではありません。
肥満症と診断される2つの道
| 共通の前提 | 加わる条件 | |
|---|---|---|
| 道① | BMI25以上 | 肥満症の診断に必要な健康障害がある |
| 道② | BMI25以上 | おなかのCT検査で、内臓脂肪の面積が100cm²以上ある(内臓脂肪型肥満)。健康障害があるかどうかは問わない |
道②は、今は病気が出ていなくても診断されうるという意味です。軽い肥満でも、内臓に脂肪がたまっていると病気が出やすいと報告されています。
内臓脂肪の面積は、体重計や見た目ではわかりません。CTで撮った画像から測ります。
健康障害として数えられる11の病気
ガイドラインが「肥満に関連する健康障害」として挙げるのは、次の11です。言葉を少しかみくだいて並べます。
| ガイドラインの言葉 | どんな状態か |
|---|---|
| 耐糖能障害 | 血糖をうまく下げられない状態。2型糖尿病や、その手前の段階(耐糖能異常)を含む |
| 脂質異常症 | 血液の中のコレステロールや中性脂肪の値が、望ましい範囲から外れている |
| 高血圧 | 血圧が高い状態が続いている |
| 高尿酸血症・痛風 | 血液の尿酸が多い。関節の痛みの発作(痛風)を含む |
| 冠動脈疾患 | 心臓に血を送る血管が狭くなったり詰まったりする病気 |
| 脳梗塞 | 脳の血管が詰まる病気 |
| 非アルコール性脂肪性肝疾患 | お酒が主な原因ではない脂肪肝 |
| 月経異常・不妊 | 月経の乱れや、妊娠しにくさ |
| 閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群 | 眠っている間に、のどがふさがって呼吸が止まる。呼吸が浅くなる状態を含む |
| 運動器疾患 | 膝や腰など、体を動かす部分の病気 |
| 肥満関連腎臓病 | 肥満がかかわって腎臓の働きが落ちる病気 |
どれに当てはまるかは、検査をもとに医師が判断します。健康診断で数値を指摘されただけでは、診断がついたことにはなりません。
原因の病気がある肥満(二次性肥満)
体重が増えた原因が、別の病気や薬にある場合があります。これを症候性肥満、または二次性肥満と呼びます。
- ホルモンの病気によるもの(内分泌性肥満)
- 生まれつきの体質によるもの(遺伝性肥満)
- 脳の視床下部という場所の病気によるもの(視床下部性肥満)
- 飲んでいる薬の影響によるもの(薬剤性肥満)
日本肥満学会のステートメントは、こうした肥満が疑われる人では、原因を調べ、もとの病気を治すことを先にするよう求めています。体重を減らす薬から始める順番ではありません。
肥満症の診断から、ゼップバウンドの対象までの距離
肥満症と診断されることは、入口にすぎません。ゼップバウンドを使える人は、そこからさらに絞られます。
| 段階 | 求められること |
|---|---|
| 1 肥満の判定 | BMI25以上 |
| 2 肥満症の診断 | BMI25以上で、健康障害がある。または内臓脂肪の面積が100cm²以上 |
| 3 電子添文の対象 | 高血圧・脂質異常症・耐糖能障害のどれかがあり、食事と運動の治療で足りない。そのうえでBMI35以上か、BMI27以上で健康障害が2つ以上 |
| 4 保険で使う条件 | 前提の病気は高血圧・脂質異常症・2型糖尿病に限る。決められた医療機関で、6か月以上の食事と運動の治療を受けている |
3と4のくわしい中身は保険で使える人の条件、医療機関の側の条件は処方できる医療機関の条件で説明しています。
BMIの出し方
BMIは、体重(kg)を、身長(m)で2回割って出します。
例として、身長160cm・体重70kgの人なら、70 ÷ 1.6 ÷ 1.6 で、およそ27.3です。
BMIは身長と体重だけで決まる目安です。筋肉の多さや、脂肪がどこについているかはわかりません。内臓脂肪で診断の道②を確かめるには、CTの検査が要ります。
よく出る疑問
BMIが25未満でも、肥満症と診断されますか?
このページで紹介した診断基準では、どちらの道もBMI25以上が前提です。BMIが25に届かない場合は、この基準の肥満症には当てはまりません。
肥満症と診断されたら、ゼップバウンドを使えますか?
それだけでは決まりません。前提の病気、BMIの数字、食事と運動の治療の期間など、さらに条件があります。順番は保険で使える人の条件にまとめています。
自分が肥満症かどうか、自分で決められますか?
決められません。健康障害があるかどうかの診断や、内臓脂肪の面積を測るCTは、医療機関で行うものです。BMIの数字は、受診のときに相談するきっかけとして使ってください。
お酒をよく飲む人の脂肪肝も、健康障害に入りますか?
ガイドラインの一覧にあるのは「非アルコール性」の脂肪性肝疾患です。お酒が主な原因かどうかを含めて、医師が判断します。
- 最適使用推進ガイドライン チルゼパチド(ゼップバウンド皮下注)~肥満症~(令和7年3月・令和8年5月改訂)厚生労働省(2026年10月31日に確認)
- 日本肥満学会「肥満症治療薬の安全・適正使用に関するステートメント」(2023年11月25日策定・2025年4月10日改訂)(2026年10月31日に確認)
このページは、電子添文や国のガイドラインなど公開された資料をまとめたものです。一人ひとりの体に合うかどうかは判断できません。始める・やめる・量を変えるときは、処方した医師か薬剤師に相談してください。当サイトは医療機関の紹介も、薬の販売もしていません。詳しくは免責事項をご覧ください。