マンジャロと同じ成分のゼップバウンド。何が違う?
「中身が同じなら、どちらを使っても同じでは?」という疑問に、2つの電子添文と国のガイドラインの記載で答えます。
- 有効成分は、どちらもチルゼパチドです。注入器「アテオス」の形も同じです。
- 違うのは、承認を受けた病気です。マンジャロは2型糖尿病に使います。ゼップバウンドは、条件を満たす肥満症と、中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群に使います。
- 病気が違うので、量の決まり、使える医療機関、使える期間、保険の扱いが別々に決まっています。
- 2つを一緒に使うことはしません。
同じ成分なのに、なぜ薬が2つあるのか
日本の薬は、病気ごとに試験を行い、その病気に使う薬として承認を受けます。
マンジャロは、2型糖尿病の人を対象にした試験をもとに承認されました。ゼップバウンドは、肥満症の人を対象にした別の試験をもとに承認されました。その一つが、日本人だけで行ったSURMOUNT-Jです。この試験では、糖尿病のある人は対象から外されていました。
日本肥満学会は、ゼップバウンドを、肥満症での効果と安全性を独立した試験で確かめて世に出た「別の製剤」だと説明しています。
一方で、2つの薬のつながりもあります。国の薬価の一覧では、同じ成分の番号(2499422)の下に並んでいます。副作用を見張るための計画(医薬品リスク管理計画)も、2つの薬で1本にまとめられています。
承認と発売の日付
| 項目 | マンジャロ | ゼップバウンド |
|---|---|---|
| 承認 | 2022年9月26日 | 2024年12月27日 |
| 薬価基準への収載 | 2023年3月15日 | 2025年3月19日 |
| 発売 | 2.5mgと5mgは2023年4月、7.5mgから15mgは2023年6月 | 2025年4月11日 |
| あとから加わった効能 | なし | 2026年5月18日に、耐糖能障害と睡眠時無呼吸症候群が加わった |
ゼップバウンドの申請は、新しい効能と新しい用量の薬としての区分で出されました。マンジャロの収載日は、厚生労働省の供給状況の一覧に載っている日付です。
何の病気に使う薬か
マンジャロの電子添文に書かれた効能は、2型糖尿病だけです。食事療法と運動療法を十分に行っても効果が足りないときに考える、と添えられています。
ゼップバウンドの効能は2つです。
- 肥満症:高血圧、脂質異常症、耐糖能障害(2型糖尿病や耐糖能異常など)のどれかがあることが前提です。そのうえで、食事と運動の治療で効果が足りず、BMI35以上か、BMI27以上で肥満に関係する健康障害が2つ以上ある場合に限ります。
- 閉塞性睡眠時無呼吸症候群:中等症以上で、BMIが27以上の場合に限ります。
肥満症のガイドラインには、ゼップバウンドは肥満症の薬なので、2型糖尿病の治療を主な目的にして使わない、とも書かれています。肥満症と診断される基準は肥満症と診断される基準、睡眠時無呼吸症候群での使い方は睡眠時無呼吸症候群のページで説明しています。
量の決まりの違い
| 段階 | マンジャロ(2型糖尿病) | ゼップバウンド(肥満症) |
|---|---|---|
| 最初の4週間 | 週1回2.5mg | 週1回2.5mg |
| 続ける量 | 5mg | 10mg |
| 上げ方 | 5mgで足りなければ、4週間以上あけて2.5mgずつ増やせる | 4週間ごとに2.5mgずつ上げて10mgにする |
| 量の幅 | 増やすのは15mgまで | 5mgまで下げられる。4週間以上あければ15mgまで上げられる |
ゼップバウンドの電子添文には、体重の減り方や体への合い方によっては、5mgのまま続けることも考える、と書かれています。睡眠時無呼吸症候群に使うときは、続ける量が15mgです。合わないときは10mgから15mgの間とされています。
打ち忘れたときの72時間の目安など、打ち方の決まりは2つの薬で同じです。手順はアテオスの打ち方と量の上げ方にまとめています。
使える医療機関と、期間の上限
ゼップバウンドは「最適使用推進ガイドライン」の対象の薬です。このガイドラインは、ゼップバウンドを肥満症に使う医療機関、医師、患者の条件を決めています。マンジャロは2型糖尿病の薬なので、このガイドラインの対象ではありません。
肥満症のガイドラインの主な条件です。
- 診療科:内科、代謝内科、糖尿病内科、内分泌内科、循環器内科のどれかを掲げる保険医療機関
- 医師:決められた学会の専門医の資格をもつ常勤の医師が1人以上いる
- 施設:学会の教育研修施設で、常勤の管理栄養士が栄養指導をする体制がある
- 患者:その医療機関で食事と運動の治療を6か月以上受け、その間に2か月に1回以上の栄養指導を受けても効果が足りない
- 期間:最大72週。3〜4か月たっても良くなる傾向がなければやめる
72週という長さは、日本人の試験で効果を主に評価した期間が72週だったことから決められました。睡眠時無呼吸症候群には別のガイドラインがあり、こちらの上限は52週です。条件の細かい点は処方できる医療機関の条件で扱っています。
副作用の頻度の区分が違うところ
「重大な副作用」の欄は、2つの電子添文で同じ並びです。低血糖、急性膵炎、胆嚢炎や胆管炎、アナフィラキシー、イレウス(腸閉塞)などが載っています。
違いがあるのは「その他の副作用」の頻度の区分です。
| 副作用 | マンジャロの電子添文 | ゼップバウンドの電子添文 |
|---|---|---|
| 注射部位反応(赤み、かゆみ、痛み、腫れなど) | 1〜5%未満 | 5%以上 |
| 鼓腸(おなかにガスがたまる) | 1%未満 | 1〜5%未満 |
| 膵アミラーゼとリパーゼの上昇、体重減少 | 1〜5%未満 | 1%未満 |
| 浮動性めまい、脱毛症 | 記載なし | 1〜5%未満 |
吐き気、嘔吐、下痢、便秘、腹痛、食欲の低下は、どちらの電子添文でも5%以上の区分です。受診の目安は副作用と受診の目安で説明しています。
保険の扱いの違い
マンジャロは、2型糖尿病の薬として薬価基準に載っています。
ゼップバウンドを肥満症で保険診療に使えるのは、ガイドラインの条件をすべて満たす場合です。さらに電子添文の「保険給付上の注意」が、保険の対象を高血圧、脂質異常症、2型糖尿病のどれかがある人に限っています(保医発0518第2号、2026年5月18日付)。効能には入った耐糖能異常だけの人は、保険の対象になりません。
ゼップバウンドを保険で使う医療機関は、診療報酬の明細書に多くの事項を書きます。専門医がいるかどうか、管理栄養士の免許証の番号、6か月以上の栄養指導の日付、72週以内にやめる計画を作った日などです。
人ごとの条件の照らし合わせは保険で使える人の条件、薬価の額は薬価と供給の状況にあります。
取り違えと、一緒に使わないこと
2つの薬は、同じ形の注入器を使います。メーカーの適正使用の資料には、マンジャロとの取り違えを防ぐための項があります。ゼップバウンドの箱とラベルには、すべての量で薄い緑色が使われています。
ゼップバウンドの電子添文は、マンジャロなどチルゼパチドを含むほかの薬や、GLP-1受容体に働くほかの薬と併用しないよう書いています。マンジャロの電子添文にも、ゼップバウンドと併用しないという記載があります。別の医療機関で注射の薬を受けているときは、処方する医師に必ず伝えてください。
マンジャロを肥満症の治療に使ってよいのか
マンジャロの承認は、2型糖尿病だけです。2型糖尿病のない人が、体重を減らす目的でマンジャロを使うのは、承認された効能の外の使い方(適応外使用)になります。
製造販売元などのお知らせは、2型糖尿病のほかの目的での安全性と有効性は確かめられていないとしています。2026年6月16日の厚生労働省の通知も、美容や痩身の目的で使われている実態を挙げ、適応外の使い方は思わぬ健康被害につながるおそれがあると書いています。
健康被害が出たときの公的な救済にも違いが出ます。厚生労働省は、美容・痩身・ダイエットの目的で適応外に使った場合、重い健康被害が出ても、医薬品副作用被害救済制度の給付を受けられない可能性が非常に高いとしています。
チルゼパチドで肥満症に承認されているのは、ゼップバウンドです。ただし使えるのは、上の条件に当てはまると医師が判断した人です。2型糖尿病のある人が、糖尿病の治療としてマンジャロを使うのは、承認の範囲の使い方です。
よく出る疑問
マンジャロとゼップバウンドは、同じ薬と考えてよいですか?
成分は同じですが、別の薬として別々に承認されています。使う病気、続ける量、使える医療機関と期間、保険の扱いが違います。
注入器が同じ形なら、どちらを打っても同じですか?
いいえ。処方された薬を、処方された量で使います。打つ前に、ラベルの薬の名前と量を確かめてください。ゼップバウンドの箱とラベルは薄い緑色です。
2型糖尿病と肥満症の両方がある人は、どちらを使いますか?
ゼップバウンドの肥満症の効能は、2型糖尿病などがあることを前提にしています。一方でガイドラインは、ゼップバウンドを2型糖尿病の治療を主な目的にして使わないとしています。どちらを使うかは、病気と体の状態を見て医師が決めます。
「保険でマンジャロを使って痩せられる」という広告は正しいですか?
マンジャロの効能は2型糖尿病だけで、痩身は効能に入っていません。厚生労働省の医療広告の事例解説書は、自由診療を保険診療だと思わせる表現を不適切な例に挙げています。
- ゼップバウンド皮下注 電子添文(2026年9月改訂 第6版)|PMDA(2026-10-31確認)
- マンジャロ皮下注 電子添文(2026年9月改訂 第11版)|PMDA(2026-10-31確認)
- 最適使用推進ガイドライン チルゼパチド(ゼップバウンド皮下注)~肥満症~(令和7年3月・令和8年5月改訂)|厚生労働省(2026年5月)
- 最適使用推進ガイドライン チルゼパチド(ゼップバウンド皮下注)~閉塞性睡眠時無呼吸症候群~(令和8年5月)|厚生労働省(2026年5月)
- 肥満症治療薬の安全・適正使用に関するステートメント|日本肥満学会(2025年4月10日改訂・2026-10-31確認)
- ゼップバウンド皮下注 審査報告書(2024年12月27日承認)|PMDA(2024年11月14日)
- ゼップバウンド皮下注 審査報告書(2026年5月18日承認)|PMDA(2026年5月)
- ゼップバウンド 薬価基準収載・発売のお知らせ(日本イーライリリー・田辺三菱製薬)(2025年3月19日)
- ゼップバウンド皮下注アテオスに関する適正使用のお願い(RMP資材)|PMDA(2026年5月)
- マンジャロ皮下注アテオス、ゼップバウンド皮下注アテオスに係る医薬品リスク管理計画書|PMDA(2026年9月7日提出)
- 医療用医薬品供給状況(令和8年10月30日現在)|厚生労働省(2026年10月30日現在・2026-10-31確認)
- 肥満症の効能又は効果を有するチルゼパチド製剤に係る最適使用推進ガイドラインの策定に伴う留意事項について(保医発0318第3号)|東海北陸厚生局(2025年3月18日)
- Kadowaki T, et al. SURMOUNT-J. Lancet Diabetes Endocrinol. 2025;13(5):384-396(2025年)
- GLP-1受容体作動薬及びGIP/GLP-1受容体作動薬の適正使用に関するお知らせ(ノボ ノルディスク ファーマ・日本イーライリリー)|PMDA(2026年7月17日更新)
- GLP-1受容体作動薬及びGIP/GLP-1受容体作動薬の適正使用について(通知)|PMDA(2026年6月16日)
- マンジャロ・リベルサスなどの2型糖尿病治療薬の美容・痩身目的での使用による健康被害にご注意ください|厚生労働省(2026年6月公開・2026-10-31確認)
- 医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第5版)|厚生労働省(2025年3月)
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